外科

診療担当表

◆呼吸器科

従来は内科・外科でそれぞれ呼吸器疾患の診察をしていましたが,今後は“呼吸器科”として診療内容を充実させていきます.

呼吸器科が診る病気
呼吸器科が診る代表的な病気は,肺がんなどの悪性腫瘍,肺結核や増加しつつある非結核性抗酸菌症などの感染症,若い人にも見られる肺に穴が開く自然気胸,治療の難しい間質性肺炎,“タバコ病”である慢性閉塞性肺疾患(COPD),職業病であるじん肺や石綿(アスベスト)関連疾患などです。

検診異常の精密検査
健康診断やがん検診でのレントゲン検査で異常が疑われた場合には,呼吸器科で精密検査を行います。肺の精密検査であるCT検査は,検査予約が無くても受診当日にすぐに撮影して結果もご説明します.CT検査の結果によっては,がん検診に有用なPET検査や気管支鏡検査などの検査も当院で行えます。

◆担当医
●呼吸器外科部長 河本 純一(こうもと じゅんいち)
専門資格:日本外科学会専門医

●呼吸器科医長 栁沼 裕嗣(やぎぬま ひろし)

専門資格:呼吸器外科専門医、がん治療認定医、外科専門医、外科指導医、臨床研修指導医

●呼吸器内科専門外来 梅野 貴裕(うめの たかひろ)(非常勤)

施設認定(赤穂中央病院) 呼吸器外科専門医合同委員会認定修練施設,日本呼吸器学会関連施設

◆当科で扱う主な疾患のご紹介
1. 肺がん
肺がんは現在がんによる死亡原因の第一位で治療が最も難しいがんの一つです。当院の肺がん治療の特色は以下の様なものがあります。
・診断から治療(手術・化学療法)までを一貫して当科で行います。
・胸腔鏡(きょうくうきょう)手術(VATS)・肺を残す手術(縮小手術)を行います。
・病気の拡がりや治療効果の正確な判定のためにPET(ペット)検査を活用しています。

A) 肺がんの診断法
ほとんどの肺がんは,胃がんや大腸がんのように内視鏡で見える場所には出来ません。
したがって正確に肺がんの診断をつけるところから治療が始まると言えます。

① 気管支鏡検査:内視鏡である気管支鏡で肺にできた腫瘍から検査用の材料を採取します。のどの麻酔だけで通常は外来で行います.肺の端の方に出来た肺がんや小さな肺がんの診断には向きません。



[左肺に出来た大きな肺がんによる気管支鏡検査]

② CTガイド肺生検:熟練した放射線科医により行われます.局所麻酔でCT(コンピューター断層写真)を撮影しながら,皮膚から肺の影をめがけて針を入れて顕微鏡検査用の材料を採取します。気管支鏡では診断が難しい場合などに行いますが,安全のため入院(通常1泊2日)で実施します。


[写真は当院でのCTガイド肺生検の様子.左は左肺に出来た小さな腫瘍.
右はその腫瘍に検査用の針が刺さっている様子.]



③ 胸腔鏡生検:他の検査で診断が難しい場合に行います.全身麻酔で行うので入院が必要です。診断は極めて正確で,その場ですぐに診断をつける術中迅速病理診断も行えます。

④ PET検査:当院では肺がんの診断と病気の拡がり(病期=ステージ診断)に重要な役割を持つPET検査(FDG-PET/CT)が実施出来ます。PET検査は肺から検査材料を採るわけではなく,特殊なブドウ糖の検査薬を注射で投与してから写真を撮る装置でとても安全な検査法です。ただし出来あがった写真を専門家の眼で正確に解釈・診断することが大切で,県内でも早くから肺がん診療にPETを導入していた当院では豊富な症例数を経験しています。PETを使えば以前は見つけにくかった他の臓器への転移が見つかったり,偶然他のがんなどを見つけることも出来ます。


「当院のFDG-PET/CTの写真.左の白黒写真は右肺に出来た肺がんと全身のPET像(明らかな転移なし).右のカラー写真は同じ腫瘍をCTと合成してできるPET/CT像.」


B) 肺がんの治療:
1.肺がんの手術療法

肺がんがとり切れると判断すれば,手術療法が選択されます。手術療法は根治が期待できる最も重要な治療法です。肺がんの手術は順調に進めば出血量も合併症も少ない手術です。しかし肺の血管は非常にもろく,手術には十分な経験と技量が必要です。内視鏡である胸腔鏡を使うことで,安全で患者様の身体の負担の少ない手術を心がけています。

① 小さな創(キズ)で行う胸腔鏡手術(VATS):ほぼすべての手術で胸腔鏡を用いています。この胸腔鏡手術のことをVATSと呼び,器具の進歩により肋骨を切らない小さな創で,痛みを減らして行えるようになっています。ただし癒着や病気の状態によっては大きな開胸で行うなど,症例ごとに安全な方法を検討して行います。


[開胸術のいろいろ(岡山大学呼吸器・乳腺内分泌外科学のホームページより引用)
(http://www.nigeka-okayama-u.jp/chest/medical_012.html)]


② 肺を残す手術(縮小手術):肺は右肺が3つ,左肺は2つの肺葉(はいよう)にわかれています。肺がんに対する「標準的根治手術」は肺がんが出来た肺葉の一つを丸ごと摘出する「肺葉切除術」です。ところが最近は画像診断の進歩により,昔はとても見つけられなかった小さく淡い早期の肺がんが見つかるようになりました。そのようながんにも大きな癌と同じように「肺葉切除」を行うと正常に働ける肺をたくさん失います。そこで慎重に検討して小さく採ってもがんが残らないと判断される場合に限り,「区域」と呼ばれる肺葉より小さな単位で切除する「区域切除術」という縮小手術も当院では導入しています。技術的には肺葉切除よりも複雑なことが多いですが,早期の肺がん以外にも高齢の方や肺の働きの弱っている人の肺がんにも応用しています。


[肺の切除方法(「がんサポート」手術の世界標準は「肺葉切除」
それよりも小さな切除でも安心か、現在臨床試験中 どこまで進んでいるか、
肺がんの縮小手術(http://gansupport.jp/article/cancer/lung/lung01/2814.html)より引用]


当院の肺がんの手術療法の考え方
近年はできるだけ身体への負担を減らすことの大切さが重要視され「低侵襲(ていしんしゅう)」という言葉がよく使われます。小さな創で行う内視鏡手術は低侵襲手術の代表です。しかし創が小さいに越したことはないのですが,術者の技量によっては手術時間が長くかかります。また専門家の間でも安全性(出血に対する緊急対応)や「がんの手術」としての品質(がんやリンパ節を取り残さないか)などが未だに論議されています。当院の肺がん手術に対する基本姿勢は,「安全性」と「低侵襲」のバランスを見極めることです。「創は○センチまで!」と決めたりはせずに「同じ品質の手術を出来るだけ短時間で終わる」創の大きさが患者さんに負担の少ない手術と考えて,症例ごとに対応しています。

当院独自の術後酸素療法
肺に関わらず全身麻酔の術後には酸素吸入が行われています。しかし意外に「どれくらいの酸素がいつまで必要なのか?」は考えられずに習慣的に行われていることが多いようです。過剰な酸素投与は必ずしも体によいものではありません。当科ではその特性を理解した術後の酸素療法にこだわっています。
① 正確な投与酸素濃度:昔から使われている酸素マスクでは実際に吸い込んでいる酸素濃度を決めることができません。当院では手術直後には正確に酸素濃度設定出来るハイホーネブライザーという器械を使用しています。この器械を使えば刻々と変化する肺の酸素を取り込む力が正しく評価できます。
② 術後せん妄(幻覚)の予防:肺の術後は順調なら半日〜1日以内には肺の酸素を取り込む力が回復して,酸素吸入が不要になります。しかし実は元気になったと油断しがちな手術の翌日から数日間は睡眠のリズムが普段と変わり,深すぎる眠りが周期的に起こり身体の酸素不足がおこります。これを「術後夜間一過性低酸素症」などと呼び,高齢の方の手術後に一過性の幻覚が起こる「術後せん妄(もう)」の原因の一つと言われています。当院では術後夜間一過性低酸素症の予防のために経過が順調でも,術後しばらくは寝る時だけ少量の酸素を吸っていただく酸素投与法を試みています。

よくお受けする質問「肺がんの手術の入院期間は?」
肺や心臓の持病がない方は手術の前日に入院していただきます。入院期間は,肺からの空気漏れや胸水を抜くために胸に入れたチューブ(ドレーンといいます)が抜ける時期と,術後の創の痛みで決まります。おなかの手術と違って食事の制限がないので,点滴は通常は手術の翌日の午前中までです。当院では溶ける糸で創を閉じるので抜糸も無く,昔のように毎日の消毒などは行いません。目安として早い人は術後3,4日で退院されますが,ご高齢の方や遠方の方は1週間以上おられる方もいます。
入院期間をあらかじめ設定することはしていませんので,「ご本人が安心して帰られる時期」に退院を決めていただいています。

2.肺がんの化学療法
手術で採り切れない肺がんには主に抗がん剤による化学療法を行います。
 ①進行がん
 ②手術前にがんの大きさを小さくさせる時
 ③転移・再発の可能性を減らすために,手術後に行う時

化学療法の進歩
「抗がん剤」も投与の負担が小さく,効果が劣らないものが増えてきました.吐き気や血液(骨髄)への副作用の予防法も進化し,原則として初回導入は入院で行いますが,2回目以降の化学療法は外来で行う時代になっています。
たくさんある薬剤から,その人のがんの種類(組織型)と体力や病状にあったものを,副作用の影響も考慮して,呼吸器科医,薬剤師,看護師で相談しながら選択しています。
また肺がんの中でも「腺がん」というタイプは,腫瘍細胞の遺伝子異常を調べることで,その治療にあった薬の開発(分子標的治療薬)が進んでおり,主に飲み薬で効果がみられることが増えています。

3. 自然気胸
外傷以外で肺に穴があいて空気漏れを起こる病気が自然気胸です。若い男性で「のう胞」という肺の表面の風船状にふくらんだ弱いところが破れて起こる特発性自然気胸と,タバコを長年吸い続けた結果,COPD(慢性閉塞性肺疾患,いわゆる肺気腫)などで肺が壊れて起こる続発性自然気胸が代表的です.自然気胸の治療法は以下のようになります。



[若い男性に同時に発症した両側の自然気胸.左の写真の矢印がしぼんだ肺で右の写真は正面から見たかたちのCT写真.両肺に「のう胞」が認められました.]




[若い男性に発症した右肺の自然気胸.左の写真の矢印がしぼんだ肺で,右の写真はドレナージにより肺が膨らんでいます.]


① もれた空気を体の外に出すドレナージ術
気胸に対する治療の一歩が肋骨の間からチューブを入れて,たまった空気を体の外に排出させることで,この方法をドレナージといいます。これでひとまずしぼんだ肺がふくらみ,空気漏れが治ることもあります。最近では小型で体に貼り付けるタイプのドレナージ法もあり,外来で治療することもあります。

② 手術療法
自然気胸はドレナージだけでは半分ぐらいの人は再発するとも言われています.再発の方,ドレナージをしても空気漏れが続く方,複数の「のう胞」が見つかった方などは手術療法をお勧めしています。胸腔鏡でのう胞を切り取って,人工の「シート」などでさらに肺の表面を補強します。通常術後2-3日で退院が可能です。

意外と難しい気胸の手術
気胸は良性疾患であり,その手術療法は(言葉は悪いのですが)「タイヤのパンク修理」にもよく例えられます。VATSによる気胸の手術ではほとんど肺をしぼませて行う肺癌の手術と異なり,肺をふくらませて空気漏れの場所をさがすため,意外と視野がせまくなります。現在では胸腔鏡のポート(道具を入れる穴)の数を少なくして(ひとつだけ!など)工夫して手術を行う施設もあります。しかし肺の表面をくまなく十分に観察して,再発予防の処理をするためには,手術のポートは通常3つ(カメラ用ひとつと器具用ふたつ)必要と考えて手術を行っています。

4. 感染症(胸膜炎・膿胸(のうきょう))の治療
肺の周囲に感染を起こして水や膿みがたまる胸膜炎や膿胸も呼吸器外科的治療が有効です。治療は抗菌剤が基本ですが,発熱や痛みが強かったり,感染症がこじれやすい糖尿病の方などでは胸腔鏡で肺の周囲を速やかに浄化します。

5. 石綿・アスベストによる病気に対する胸腔鏡検査
西播磨地区にはお仕事などで知らない内に石綿(アスベスト)を吸っていた方がおられます。このような方の中には,胸膜中皮腫という悪性の病気が発生する場合があります。この病気の疑いがある時や他の病気との鑑別診断には,胸腔鏡が必要になることもあります。

6. 肺移植の相談
臓器移植も徐々に普及してきており,当科では肺移植の相談も行えます(過去に当院で肺移植の適応と判断し,実際に肺移植を受けられた方もおられます)。移植医療については専門機関で厳格な適応の審査がなされ,肺移植は治療に反応しない慢性進行性肺疾患で肺移植以外に患者の生命を救う有効な治療手段が他にないことが条件です。肺移植を受けられる方(レシピエント)の年齢が,原則として両肺移植の場合55才未満,片肺移植の場合には60歳未満です。疾患としては原発性肺高血圧症,間質性肺炎,びまん性細気管支炎,肺リンパ脈管筋症,気管支拡張症,肺気腫などの方で,肺がんなどの悪性疾患や最近まで喫煙をしていた方などは適応外です。(岡山大学呼吸器外科のホームページ(http://www.nigeka-okayama-u.jp/chest/medical_003.html#contact)も参考にして下さい)

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